あのひとに 展望台の 双眼鏡から 眼下の街を眺めていると、 色づいたイチョウ並木の間を歩く ポニーテールの女性に目がとまった。 はしゃいだ様子で、 空へ電話をかけている。 言葉のとぎれない くちもとが はっきりと見える。 花柄の手提げから手帳を取り出して 何かを書き付けたあと、 電話は終わった。 もう一度、ボタンは押されて、 別な相手と話が始まった。 今度はうつむいて、 話の間合いが長い。 風が吹いてきた。 辺り一面、鮮やかに落ち葉が舞い、 これは泣くなと思ったら、 やはり泣いた。 あのひとに、 なにがあったのか。 傍観者には、 何も意味のないことだ。 カシャリ、コインの落ちる音もして、 レンズは暗くなった。 背を伸ばすと、 頭に何かが当たった。 足もとにドングリが転がり、 見上げると椎の木に、 この山に住む野生のリスが、 いや、 二人の男の子も登っていて、 わたしを見ながら、 あどけなく笑っている。 |
<< 前記事(2007/11/29) | ブログのトップへ | 後記事(2007/12/01) >> |
タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
---|
内 容 | ニックネーム/日時 |
---|
<< 前記事(2007/11/29) | ブログのトップへ | 後記事(2007/12/01) >> |